第5話《ケーススタディ》

ここは山と海に挟まれた、とある田舎町。
町の中心から続く県道をしばらく走り、トンネルを抜けた先の小さな住宅街の一角。
地域の人に”イヤシロチ”としてこよなく愛されている鍼灸院がある。
その名も『鍼Go!堂』
ここで働いているのはたったの2人。
どこか抜けているが患者の信頼は厚いGo院長と、立派な鍼灸師を目指す弟子2年目のまめちびだ。
おや?今日もなにやら会話が聞こえてきましたよ?
早速聞き耳を立ててみましょう。

Go: まめちびお疲れさま。

まめ: お疲れ様で~す。

Go: いや~今日も忙しかったね。

まめ: え?

Go: え?って今日も忙しかったねって。

まめ: 今日4人しか来てないですよ?天候が荒れてキャンセル多発でしたし。

Go: あれ?

まめ: あれ?じゃないですよ、4人ですよ。

Go: そうだっけ?だって今日一日中治療してた気がするぜ?

まめ: だって先生、1人2時間位くっちゃべってましたよ?

Go: おいおい、おしゃべりしてたならわかるけどさ。くっちゃべってたってなんか悪意あるよね。
でも確かに、今日はしゃべりすぎて、3人くらい鍼打つの忘れちゃったな。

まめ: ちょ!やりすぎやろ!

Go: ウソだよ。

まめ: 先生ならやりかねんと思ったよ。

Go: 近いもんはあるけど。

まめ: 先生の人生と治療者としての心構え、ちゃんと考えたほうがいいっすよまじで。

Go: よし、いつもよりだいぶ時間あるから、ケーススタディでもやろかー。

まめ: いいですね!やりましょ~!

・・・・・・・・・・・・

 

Go: よし、準備はいいか?

まめ: OKです。

Go: 今日のテーマは「想定外」だ。

まめ: おもしろそうですね。

Go: ケース1、30代後半女性。
15年前から毎日頭痛を起こしていて、酷いと吐いてしまう。
性格は心配性。人にとても気を遣ってしまう。
どこの病院に行っても鎮痛剤を渡されるのみ。MRI異常なし。
なんと15年間ほぼ毎日のように薬を飲んでる。
この女性の治療はいつものように、脈診、腹診、背候診、原穴診などにより診断、治療をした。
治療後すぐに痛みが引いてきた。
でもこの時点ではまだ患者さんはまだ半信半疑だった。
この翌日から痛みがゼロになっても、しばらくはまだ半信半疑だった。
なにせ15年間毎日の頭痛が、そんなに簡単に引くわけがないと思っていたからね
でもそんな疑いも、いい意味で裏切られた。
私が確認する限りではそれから4年以上発症していない。

まめ: 15年毎日薬を飲んでた人が、ピタリと⁉︎
なにがそんなに効いたんででょうね?

Go: 簡単に言うと治療は腎肝の調整してからの大腸の調整、この人の場合右の合谷の反応が強かったから念入りにやった。
同時に体外受精などの不妊治療もやっており、40歳を超えていたが鍼灸治療により体の整ってきたころ妊娠も出来た。
この人はどんな症状でも、治療をすると面白いように治るんだよ。

まめ: へ~すごい!体の状態と使ったツボ全部教えて下さい。

Go: いいよ。そのつもりだ。カルテを見せながら話そう。
特に特徴的なのは腹診だ。みてごらん。
そして脈診は…

・・・・・・・・・・・・・

カルテをみながら一通りの説明を終えた。

Go: ケース2、70代女性。
1年前より足の裏がおかしいといって来院された。
両足の裏の感覚がないと言う。歩いていてもふわふわして気持ち悪い。
病院に行ってもどこも異常がないと言われるし本人も、どうしていいかどこに行っていいかわからないと言っている。

まめ: 神経痛とも違うし難しい症例ですね。
これはどうだったんですか?

Go: 10回以上治療をしても全く変化すら見られない。
総じて高齢になればなるほど治りにくいが、これも悔しいほど全く歯が立たなかったな。
このカルテを見るとわかるが毎回おれも悪戦苦闘しながらやってるだろw

まめ: ほんとだ、苦戦のあとがみえますね。
てか治らなかったのはケーススタディに必要ですか?

Go: 言ったろ?テーマは想定外だ。
はい、じゃ次ケース3、脱肛の男性50代半ば。
脱肛とは直腸の下の方が肛門外に出てくる病気な。
これまでは自分で押し込んでなんとかしのいでいたらしいのだが、この一週間は自分で押し戻せなくなった。
痛みも強いので、まともに椅子に座れない。
病院に行くと手術入院で10万以上かかるし、最低でも一週間は入院しなきゃいけない。
でも仕事に穴を空ける事は出来ないからなんとかして下さい、とのこと。
この人は超簡単に言うと、脾腎と大腸の調整をメインにしてあとは胃と胆をちょこっとやった。
術後しばらくてその日のうちに脱肛は引っ込んだ。

まめ: え?その日のうちに出てたものが引っ込んだんですか⁉︎

Go: うん、その後は出てくることはなく、痛みも数日で治った。

まめ: 気持ちのいい程効きましたね。

Go: おれもびっくりしたよ。
初めての症例だったし、こんなに効くとは思わなかった。
カルテみて所見の説明とツボ教えとくか。

まめ: お願いします!彼が痔持ちだし、参考になるかも!

・・・・・・・・・・・・・・・・

まめ: 今回の想定外のケーススタディ、3つとも面白かったですね。
ありがとうございました。

Go: さて、本題に進もう。

まめ: え⁉︎このケーススタディは本題じゃなかったの?

Go: ただの序章だよ。

まめ: 先生、私を楽しませてくれますね~

第6話

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