第14話《気とは何か》

ここは山と海に挟まれた、とある田舎町。
町の中心から続く県道をしばらく走り、トンネルを抜けた先の小さな住宅街の一角。
地域の人に”イヤシロチ”としてこよなく愛されている鍼灸院がある。
その名も『鍼Go!堂』
ここで働いているのはたったの2人、どこか抜けているが患者の信頼は厚いGo院長と、立派な鍼灸師を目指す弟子2年目のまめちびだ。
おや?今日もなにやら会話が聞こえてきましたよ?
早速聞き耳を立ててみましょう。

まめ: 今日午前中予約はもう入ってないので、こないだの話の続きが聞きたいです。

Go: マッサマンカレーについてか?

まめ: マッサマンカレーが美味しいのはわかりました。

Go: おほお!わかってくれるか!
今日もランチ行くか!

まめ: 二日連続で食べたいほどではないですから大丈夫です。

Go: ただこれまで日替わりでマッサマンが4日連続して続いた事はないから、今日は残念だけどマッサマンじゃなくてグリーンカレーだな。
マッサマンをレギュラーメニューにしてくれとお願いしているのだが、中々聞いてくれない。

まめ: いや、もうそれはいいんですよ、どっちでも。
今日知りたいのは病気についてです!

Go: あ、そっち?
前回いきなりわかりにくい話をしてすまなかった。

物事には順序がある。退屈な話もあるかも知れないが、一から話していこう。

まめ: 先生の話で面白い話はまだあまり聞いた事がないので、覚悟してます。

Go: いつも一言ないしは二言多いな。
この世の中本音と建前をうまく使ったほうがいいぞ。
本音と建前、陰と陽、そう、この世はまさに二元性だ。

まめ: はあ

Goはペンを取り出し何やら紙に書き始めた。

thumb_IMG_0040_1024

 

Go: この太極図は万物全てを表している。
もちろんまめちびも鍼灸学校の一年生の最初で習ったろ?

まめ: 習ったけど、正直、だから?って感じです。

 

Go: だよな、おれもそうだったけど、深く理解するとまた違う感じで見えてくる。
この世界すべてを表しているのだが、実に深い、そしてシンプルだ。
何もない状態、太極図で言うと縁すらない状態かもしれない。
これを一元性、単一性と言う。
古典ではこの状態から混沌が現れ、この状態ではまだ無極の状態だけど、次第にこの太極の状態になっていった。
『素問』にも書いてあるでしょ?

『清陽は天になり、濁陰は地となった地気が昇って雲になり、天気が下りて雨となる』

これが陰陽の始まり。
別の言い方をすると、一つのもの、つまり一元性から、二つのものになる、これが二元性であり、陰陽である。

まめ: あらゆる大元は一つ。全て一つのものから全て生まれたってことは、他の本でよく本で見ますね。

Go: そう。サムシンググレイト、神様、大いなる全て、普遍意識…呼び方はなんでもいいけど、その一つのものから全ては生まれた。
わかる?

まめ: わからんです。

Go: よし正常だ、こんなもん言葉で理解出来るわけがない。
ただ陰陽や二元性の話をする上で通らざるを得ないもので。

まめ: 東洋思想って超スピリチュアルですね。

Go: 鍼灸学校で教科書の一番始めに載ってて、一年生の最初習うんだよね、『宇宙の創生』と言う、ある意味超スピリチュアルな事をね。
他にもすごいこと最初に習ってるんだよ、俺らは。
例えば"天人合一思想"は天は宇宙、自然などの意味。
つまり人と自然、宇宙は元々一体なんだよと、そのように考え生きなきゃいけないよ、と言うこと。
あと"天地人三才思想"は天の陽気と地の陰気が調和することによって人の気が生成される、とかね。

まめ: んー昨日病気の話ししてたのにそれと何の関係があるの?

Go: まあそう急ぐなって。
陰陽の話はあらゆることを理解する上でとっても大事な部分になるからしっかりと知っていて欲しいんだよ。
陰陽の話の前にもう一つ、鍼灸師のまめちびに質問するのもなんだけど"気"ってなんだかわかる?

まめ: うーん、改めて聞かれると難しいな。
鍼灸師っぽく答えると、経絡とか臓腑を流れて、体を動かしているもの。
ってな感じかなぁ?

Go: おお、さすが素晴らしい!将来有望!

まめ: なんだろう。先生に褒められるとなんかむかつく。

Go: では教科書を超えて、もう少し深く気について考えてみよう。
東洋思想では宇宙の創生から生命現象に至るまでを理解し、解釈するのに根底に"気"という言葉を使った。
これはさっき言った一つのもの、と同じものだ。
物質も非物質もあらゆるものが気で出来上がっているが、気の解釈が様々な為に、なぜか一般的には目に見えない怪しいものとして扱われている。
気を感じれるんですか、とか気を出せるんですか?などと言う質問がよくある。
こういう質問が出るくらい特殊なものとして扱われるが、本来はまめちびそのものが気の塊なのである。

まめ: え?そうなの?なんか今なら元気玉出せそうな気がする。

Go: ただ気は、一つのものと言う意味よりも"働き"としての解釈の方が一般的だ。
東洋医学では様々な働きの気に分けたり、気の流れを良くする、などという使われ方をするよね。

まめ: 気が進まない、気が合う、気持ちが悪い、日常でもよく使ってますよね。

Go: そうなんだよ。皆当たり前に使ってるけど、実態はよくわかってない。
それが『気』だ。
東洋医学家が使う気の概念を一言でまとめると
"体を営養するために、身体中を巡る見えないエネルギー"
と言った概念の使われ方をすることが多い。

まめ: 気は東洋だけのものなんですかね?

Go: ラテン語ではspiritus(ピリトゥス)、ギリシャ語ではpsyche(プシュケー)やpneuma(プネウマ)、サンスクリット語ではprana(プラーナ)。
霊的な概念、生命の根源の力やエネルギー、またはその働きとして使われる言葉、これらは全て気と同じ意味だ。
世界中にどんな時代にもそれに変わる近い言葉があるんだと思う。

まめ: プラーナなんかは聞いた事あるけど、気と同じ概念だったんだ。

Go: この気の思想を根底に、東洋医学では人体を小宇宙とみるんだね。
大宇宙の中の一環として人体の臓器、組織、器官、皆異なった機能を持ちながら、同時に全体として有機的なつながりを持った一つの宇宙のような統一体をなしている。

まめ: お~なるほど、言葉は難しいけどなんとなく理解できます。

Go: "気"を使う言葉、忘れちゃいけないものがある。
それが"病気"。

第15話

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。