第19話《あなたが見てるものは幻想かもしれない・前編》

波長の種類

ここは山と海に挟まれた、とある田舎町。
町の中心から続く県道をしばらく走り、トンネルを抜けた先の小さな住宅街の一角。
地域の人に”イヤシロチ”としてこよなく愛されている鍼灸院がある。
その名も『鍼Go!堂』
ここで働いているのはたったの2人、どこか抜けているが患者の信頼は厚いGo院長と、立派な鍼灸師を目指す弟子2年目のまめちびだ。
おや?今日もなにやら会話が聞こえてきましたよ?
早速聞き耳を立ててみましょう。

まめ: おは…ようございま…す。

Go: どうした、朝からそんなに恐々しく挨拶して。

まめ: あーよかった。今日は普通ですね。
朝から自分の師匠がラッパーになるほど怖いことは無いと思いますよ?

Go: かなり練習したんだぞ。おかげで睡眠不足だよ、全く。
だがアンコールは受け付けているぞ。

まめ: 無駄に旺盛なサービス精神、勘弁してください。

Go: おい!それより今日からの勉強はまた新展開を迎えるぞ!午後楽しみにしとけ!

まめ: あ、はあ。
ラッパーでないことを祈ります。

・・・そして午後の診療が終わり・・・

Go: さて、始めるか。
今回から人間の知られざる体について勉強していこう。
もちろん一般的な解剖学の話ではない。
人間には見えない体がある。

まめ: それは鍼灸師が使ってるものだから少しは理解できているつもりです。

Go: そう、我々はその一部を経絡として使っている。
もちろん、使っているといってもほとんどの人はそれが見えない。

まめ: 不思議ですよね。見えないのに使ってるなんて。

Go: 携帯電話使ってるだろ?

まめ: はっ!電波見えなくても使ってますもんね。

Go: これから肉眼では見えないものを説明していくにあたって、どうしても抵抗がある人がいるかもしれない。
なので、始めに私らがどれだけ見えていないか、肉眼で観察出来る範囲がどれだけ狭いか説明しなければならない。

まめ: 先生なめないで下さい。私視力2.5ですけどー。

Go: お前はブッシュマンと共に生きれるな。
いやむしろ生きろ。

まめ: ふふふ
でも嫌です。

Go: そしてどれだけ現実と信じて疑わないものが、本質とはかけ離れているかということを知らなければならない。

まめ: 私初めはサムが優しい人だと信じて疑ってませんでした。
かけ離れてましたけど。

Go: その視力で周りを見てごらん。
まめちびの周りに何が見える?

まめ: えーここ院長室ですからね。
先生のパソコン、椅子、机、治療ベッド、あとベッドに寝てる人、先生の後ろにもいますね。
どちらもだいぶ透けてますけどね。

Go: まじそういうの止めてくれる?
おれが心臓ショックで死んだら、呪ってやるからな。

まめ: それで死ぬんだ、むしろノミの心臓の方が強いですね。

Go: 通常見渡して見えているもの全て、これらは私たちの知覚器官が外から入ってくる光に反応した結果、心の中に作り出したものの産物であって本質そのものではない。

まめ: え?じゃあ例えばこの椅子はどう考えても、誰が見ても椅子ですよね?
椅子に対して失礼ですよ。

Go: でもそれもまめちびの観念だからね。
つまり、椅子そのものを見てる訳でなく、椅子だと信じてる物を見てるってこと。

まめ: う~ん、、先生にはこの物体が何に見えてるんですか?

Go: おれにはグラビアアイドルに見える。
座るたびにドキドキするな。

まめ: 早急に病院に行ったほうがいいですね。

Go: 物質がそのまま見えていると思っているのも、我々はそのままを見ている訳ではない。
人が見ていると思っているものは、ある光の波長を桿体細胞と錐体細胞が反応し、その刺激を視神経により脳に伝えて、それを我々の一番厄介な心というものによって創り出した投影なんだ。

まめ: えと、ちょっと自分の頭の中を整理させて下さい。
つまり…椅子や物体そのものを見れているわけではなくて、肉体の感覚器官と心を介して、椅子を見ている…
それなら人によっても見えている物は違うって事?

Go: そう言うことになるね。
まあ、でもこれはそれくらい理解できればいいよ。
次は周波数レベルの話ね。
人間同士ならまだ近いものを見ているかもしれないが、人間以外の生き物には感知できる波長が違うので、我々が見ている世界とは全く違うものになる。
例えば音。
音っていうのは簡単に言うと、耳に届く空気のバイブレーションを自分がどういう風に感じてるかってこと。
人の可聴域は20Hzから20000Hzくらい。
ちなみにコウモリなんて4000000Hzくらいまで聞こえるらしいよ。

まめ: ハンパねえ

Go: もちろんこれにも主観性の原理が働いている。
波長の違うバイブレーションを、耳からの感覚器官が感じ取り、それを我々の心が感じ取る。
あるバイブレーションが、心地よかったり、不快だったりするし、面白いことにバイブレーションと感覚器官を通さずに、誰かの声や音を聞いたりする。

まめ: それは幻聴ですね?

Go: そう、心によって逆に聞こえないようにも出来る。
つまり音を聞くために必ずしも外部の音波が必要なわけではない。
聞きたい音を聞き、聞きたくない音を聞かないように出来るんだ。
それは感覚器官がどうかではなく、人の心によってそれを成し得る。

まめ: なんて自分勝手な耳でしょう。
あ、これが主観的ってことか。

Go: この帯域の中で波長の短いもの(振動数の高いもの)と波長の長いもの(振動数の低いもの)を我々の知覚器官が反応した結果、心の中に作り出したものの産物、それが音楽だったり周りで聞こえる音の全てだ。
自分が認識できる波長のみを五感で感じながら、自分が作りたい世界を作りあげ、逆に認識できない波長は現実ではないものとして排除する。

まめ: そう考えるとこの人生全部自分の舞台、悪く言えば妄想みたいなもんじゃないですか?

Go: その通り!見えるものも聞くものも五感全ては我々の完全なる主観であり妄想なんだ。
我々はそうあると信じてるものを見ている。
つまり観念のフィルターを通して自分と世界を作っている。

まめ: 複雑な気持ちです…

Go: 周波数の話を具体的にしてみよう。
電波もX線もガンマ線も赤外線も紫外線も光も色もみな兄弟、境目はなく波長の違いで呼び名が変わっているだけね。
可視光線の波長は380nmから810nm、周波数でいうと370から790THzしかない。
それより低くても高くても人間には認識できない。
その広大な周波数帯域の中のほ~んの一部しか我々の目には認識できない。
ちょっと待ってな

カキカキ…

波長の種類

まめ:どいひー

Go: は?

まめ:絵のクオリティがひどいですね。
左から二番目の生き物は地球の生物ですか?

Go: ほら!生き物っていうことがわかるだろ?

まめ:はあ…ほらって言われても…

Go:まああれは犬でも猫でもなんでもいいんだよ。
言いたいのは大きさ、家くらいの大きさ、犬くらいの大きさっていう目安ね。
光の波の大きさを絵にしただけで、特に大きな意味はないから気にしないで。

まめ: それならもっと控えめに書いてください。

Go: さっき言ったように、図を見てごらん。
無限に続く波長の中の、可視光線の波長、たった380nmから810nmの間しか見えてないんだよ。
何かを見てどれだけわかったつもりになっても、所詮こんだけしか見えていない。
これまで信じてきたものなんて、ある側面しか見えてないってことだ。

まめ:確かに、可視光線の領域が少し広くなるだけでも、世界が違って見えるかも…

Go: さっきも言ったように、周りにあると思っている全てのものは、光のスペクトラム(連続体)の変化があるだけなんだ。
自分の目を疑ってかかった方がいいな。

まめ: なんか物理学的に世界をみると殺伐とした気持ちになってきましたよ…

Go: そう結論付けるのはまだ早いよ。
周波数の話になったし、医療従事者にとって知っておいて損はない話題があるから次回はちょっとだけ脱線するよ。

第20話

2件のコメント

  1. なんだか大好きな某小説の、見るものによって姿かたちが変わるが、ある一定の意思を持つものには髪の毛が銀色に見える、というキャラを思い出しました(^^;
    (人類の宿敵であり、人類にとっての「鏡」や「反響」に近い存在、という設定です)

    その小説でも、あるいは映画「マトリックス」なんかでも、今いる現実は実は幻、っていう世界観が出てきますが、大掛かりな装置なんてなくても人間一人一人がそういった幻想を抱えているってことでしょうか…。
    これからどんな展開になっていくかますます面白くなってきました~。

    それから完全に蛇足ですが、ちびたちと某海外アニメを見ていたら、
    「ほかに何か症状はない?」
    「しょうじょうってなあに?」
    「体があなたに話しかける方法のことよ」
    というセリフがあって、脚本書いた人天才!と一人感動してしまいました(笑)
    日本語版で見てたので、オリジナルでは若干ニュアンスがちがったりするかもしれませんが…。
    このシリーズを読んでるから余計そう思ったのかもしれません。

    1. 人類の宿敵、鏡や反響に近い存在…某小説の著者はまるで真理を知っている人のようですね。
      そう、その小説やマトリックスは、まさに僕らがその世界の住人なんだよって教えてくれてるのかも…って考えると面白いですよね。
      この辺の話もこれからさらに深く突っ込みますからお楽しみに〜♪

      「体があなたに話しかける方法のことよ」
      その表現いただきます(笑)
      うまい表現しますね、完璧に的を得ていますね。
      ふたごうさぎさんは様々な小説やアニメから深い洞察を得てらして素晴らしいですね。
      また続き楽しみにしてください!
      まだ半分も終わってませんからね〜

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